心の治癒と魂の覚醒

        

 幸せなときほど要注意

 相撲の取り組みが終わったとき、勝った力士があからさまにガッツ・ポーズをして喜んだりしない姿勢を、私は好ましく思います。勝負ごとで勝者が喜びをあらわにせず、負けた者もそのことを表に現さず、どちらが勝ったか負けたかわからいような態度で土俵を去っていく力士の姿には、ある種の品格が感じられます。負けた者への思いやりの意味もあるといわれています。
 もし、これが実際の戦いだったらどうでしょうか。たとえば、武士が決闘に勝ってガッツ・ポーズをして有頂天になったら、その瞬間に潜んでいた敵に襲われて命を失うかもしれません。ですから、相撲力士の態度は、現実に即したものだということもできるのではないかと思います。すなわち、同じようなことは、この人生においてもいえると思うのです。
 人生において、辛く苦しく危機的な状況のなかにいるときは、思ったほど危険ではないような気がします。ところが、その危険から脱して安心したり有頂天になったときに、大きな危険にさらされることが多いようです。
 覚醒の修行にも同じことがいえるでしょう。
 逆境のときは真面目に真剣に修行に励み、人格を向上させようと努力しますが、運が開けていろいろと物質的に恵まれてくると、つい油断したり、傲慢になったり、怠惰になったり、無謀なことをしたりして、大きな失敗をしてしまうことがあるのです。
 私が知っていたある社長は、経営がうまくいかないときは社員に気を配り慕われていましたが、経営がうまくいくようになったとたん、「俺のやり方に賛同できない奴は会社を辞めろ」などといって傲慢になり、失望した社員が半分くらい辞めてしまいました。
「好事魔多し」という言葉がありますが、本当に怖るべきことは、順境のときにやってくるように思われます。逆境のときは、けっこう人間は思いやりがあったり謙虚だったりします。しかし「幸せ」になると、いきなり思いやりがなくなったり傲慢になってしまったりするのです。自分しか眼がいかなくなって自己中心的になってしまうのです。いうまでもなく、これは霊的な視点から見れば、あきらかに「後退」を意味します。
 霊的な幸せと物質的な幸せは、写真のネガとポジの関係にあるように思います。物質的に幸せなときというのは、案外、霊的には不幸な状態であったりします。逆に、物質的に不幸なときというのは、霊的には幸せな状態であったりするのです。
 一番いいのは、物質的にも幸せであり、霊的にも幸せであることでしょう。そのためには、自分が幸せを感じているときほど、人の幸せを考えるようにしなければならないと思うのです。

 私の知人が、たまたま偶然、震災が起こる直前に関西の方に引っ越しました。その後、私にこんなメールが送られてきました。
「運良く関西に引っ越すことができました。神様が守ってくれたのだと思います」
 私は思わず苦笑してしまいましたが、関西に引っ越すことができない私や大多数の人は、神様が守ってくれなかったということなのでしょうか?
 その彼は、決して悪気はなかったのだと思いますが、幸せになると、ついこのように自己中心的に物事を考えてしまう癖が、人間にはあるようなのです。
 また、結婚して子供ができると、子供の写真が写っている年賀状を送ってくる人がいますが、私はあまり好ましいことだとは思いません。子供の誕生を喜んでいる身内や親戚に送るならいいと思いますが、それほど親しいわけではない人に送った場合、子供が欲しくても授からないで苦悩している人もいるかもしれませんし、家族が欲しくても結婚できず独り寂しく暮らしている人もいるかもしれないわけです。
 こんな感じで、幸せなときには、他者への配慮が希薄になってしまうのです。これみよがしに自分は幸せだと訴えるようなことは、控えた方がいいと思うのです。

 震災のとき盛んに流れていたCMで有名になった詩人の金子みすずは、「あなたと私」「私とあなた」という言葉をいっています。「あなたと私」は、「あなた」を尊重し、あなたのことを思いやっている関係、「私とあなた」は、私が中心で「あなた」は私のためにあるという意味です。物質的に幸せになると、「私とあなた」になりやすいのです。霊的に見たら、これは非常に醜悪な姿であり、品格も何もあったものではありません。
 覚醒をめざす者は、たとえ逆境でも落胆せず、順境でも有頂天にならず、常に「あなたと私」の精神を忘れることなく、生きていかなければならないと思うのです。お相撲を見るたびに、この精神を思い出していただけたらと思います。

 余談ですが、このところ余震もだいぶ減り、震災が一段落したような気がしているかもしれません。しかし、「もう大丈夫だろう」と安心しているときが危ないのです。脅かすつもりはありませんが、いつ大きな災害(地震とは限りません)が来ても対処できるように、心の準備や物質的な準備はしておいた方がよろしいと思います。
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コメント

この記事を読み過去を振り返ってみると私も幸せな時は希薄になっていたと思います。相撲の他、日本から生まれた武道はガッツポーズをすることがないですね。そう思うと外国からきた野球、サッカー、ボクシング等はガッツポーズをして負けた相手への思いやりがないです。
私はこの記事を読み相撲という武道を改めて良く思いました。
それともう1つ、私が相撲の良いなあと思う点は土俵に塩を撒き清めることです。神様から与えられて戦うことができるし、足で踏んで戦うことだからその人間の欲望の為に使われている土俵を清める行為は大変納得できます。


それと斉藤先生に相談があります。
この記事とは全く関係ないのですが
つい最近街で声をかけて連絡先を教えてから連絡を取っているのですが、相手が今まで付き合ってきた人達と良い思い出がない為、男を信用できないと言って消極的なんです。どうすれば振り向かせられるのでしょうか?
2011-06-01 Wed 01:24 | URL | 19 [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011-06-01 Wed 07:44 | | [ 編集 ]
斉藤啓一です。19さん、いつもコメントありがとうございます。

ご質問の件ですが、女の子の言葉を聞くときは、「その言葉の背後に込められた意図は何だろう?」と常に考えることが大切です。19さんがその女の子なら、どういう希望を込めてそうした言葉を相手に向けると思いますか? そうすれば、どう対応すればいいかがわかります。

それと、縁があった女の子は、神様からのプレゼントだと思って、大切にすることです。神様からもらったプレゼントを粗末に扱いますか? そんなことをしたら、神様に対する冒涜です。
いかにして振り向かせることができるか、ということを考えるのではなく、いかにして大切にしてあげられるかという視点で考えることです。
それで去っていってしまうなら、最初から縁が無かったのだと思いましょう。
2011-06-01 Wed 09:58 | URL | 斉藤啓一 [ 編集 ]
斉藤先生お答え頂きありがとうございます。
斉藤先生の言われたように女性の立場になって考えていきたいと思います。こういうことは昔から学んだはずなんですが、すぐに自分の思いばかりを伝えていました。
もっと相手の気持ちを考えていきたいです。

確かに先生が言うように振り向かせることを考えるより大切にする方が大事だと思います。
しかし大切にするばかりじゃなく、時には゛強引゛も大事なのでは?と思います。
間違っていますか?
2011-06-01 Wed 15:57 | URL | 19 [ 編集 ]
斉藤啓一です。19さんへ。
相手が強引にされることを望んでいる場合はね。
2011-06-01 Wed 16:04 | URL | 斉藤啓一 [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011-06-01 Wed 23:59 | | [ 編集 ]
年賀状の件は、確かに子どもの居ないご夫婦や、独身者にはあれほど酷なものはありません。同感です。
しかも、
その横に、「元気ー?今年は子どもつくりなよー」
「家を建てました」とか、「ハワイで結婚式をあげました」とか書いてあるとき、だから?なんだ。って思って、その年賀状を破棄してしまったりします。
人は人。人の幸せは他人には関係ないものです。
何気ない幸せが、そこに書いてあるとき....
友人付き合いにうんざりし、おつきあいをやめたことが何度もありました。
もうその時点で、その人とは波動が違うのです。
ママ友、なんてのも言葉を聞くのも嫌です。ばからしい。
他人の家の子どもの顔なんか、かわいくもなんともない。そんな風に感じてしまったりもします。
おかげさまで、友人の数もすっきりしています。
結婚、出産が、済んだら、次は葬式です。数が少ないに超したことはありません。。。。よね。
2011-06-02 Thu 00:50 | URL | 匿名さん [ 編集 ]
斉藤啓一です。匿名さん、コメントありがとうございました。
おっしゃる通りだと思います。もう少し人の気持ちに配慮して欲しいと思うときはありますね。
ただ、そういう年賀状をもらったとき、その人の幸せを祈ることも、修行かもしれないと思うようにしています。あまり気の進まない修行ではありますが(笑)。
それと、人生は基本的に「すっきり」をめざした方がいいですね。とくに、心の伴わない、単なる表面的な意味のない儀礼などは、なるべくない方がいいと思います。
2011-06-02 Thu 08:40 | URL | 斉藤啓一 [ 編集 ]

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