心の治癒と魂の覚醒

        

 感情を乱さない


 覚醒修行の道を歩もうとしたとき、最初の基本となるべきもの、また同時に、達人の境地ともなるべきものは、結局のところ「感情を乱さない」ことだと思います。すなわち、怒らない、悲しまない、恐れない、妬まない、情欲にかられない……といったことです。
 言い換えれば、ネガティブな感情にとらわれないことですが、たとえ「喜び」や「明るさ」といったポジティブな感情でも、それが過剰になることは感情を乱したことになります。適度な喜びや明るさをもった「心の平静さ」が大切だということです。
 感情を乱さないことは、仏教でもキリスト教でも、およそ霊的な修行の道を歩む上では避けて通れない「必修科目」です。どんなに瞑想したり、祈ったり、ヨーガや荒行のようなことをしたとしても、「感情を乱さない」という姿勢が欠けていたら、何をしてもうまくいきません。むしろ修行そのものが邪道になってしまう危険もあると思います。

 しかしながら、感情を乱さないということは、実に難しいものです。たとえば「怒らない」ことひとつ取っても、世の中には怒りたくなるような出来事や人間で溢れかえっていたりしますので、非常に難しいわけです。しかも、「怒らない」というのは、心のなかは怒りで燃えているのにそれを表情に出さない、という意味ではありません。それではただの「我慢」であり、怒りを「抑圧」しているだけです。「怒らない」というのは、文字通り心のなかに怒りの感情が発生しないことです。
 悲しみも同じです。人生には悲しいことが少なくありません。たとえば家族と死別などしたら悲しいでしょう。それは人間の自然の情ではないでしょうか。かなりの境地に達している人でも、肉親と死別してまったく悲しみを感じない人はいないと思います。しかし、霊的な道を歩んでいる人は、たとえ肉親と死別したとしても、取り乱すほど悲しんではいけないとされているのです。
 怒りや悲しみの感情に乱されないこと以上に難しいのは、恐怖や不安の感情に乱されないことではないかと思います。人間には生存本能というものがあります。小さなことはともかく、大地震が起きて建物が崩壊しようとしているときだとか、刃物を持った強盗に襲われたといった場合に、恐怖や不安の感情が起きないようにするのは至難の技です。しかし、覚醒の道というものは、いかなる恐怖や不安が起きないように努力を重ねていく道なのです。実際、覚醒した人は、死を恐れなくなるようです。死を恐れなくなると、どんなことにも恐怖や不安を抱かなくなるようです。
 その他、あらゆるネガティブな感情が生じないように、たとえ生じても、最小限にとどめるべく、心を平静に保つ努力が要求されるのです。
 もちろん、だからといって、ロボットのように無感情な人間になる、ということではありません。美しい花を見たら美しいと感じ、気の毒な人を見たら同情の気持ちが湧いてくるような、人間らしい感情は持たなければならないのです。しかしそれでいて、いかなるネガティブな感情を心のなかに発生させないようにするのです。それが覚醒の修行の基本であり、また中心となるのです。本当に厳しい道であると思います。

 ただ、たとえ覚醒ということは抜きにしても、感情に乱されないようにすることは、人生の幸せを得るためには非常に大切なことではないでしょうか。それがうまくできるようになったら、その恩恵は計り知れないものがあると言えるでしょう。
 というのも、たいてい人生の大きな失敗や不幸というものは、感情に振り回されたことが原因になっている場合が多いからです。また、ネガティブな感情は心とからだに対して想像以上に破壊的な作用を及ぼすとも言われています。
 汚物に触れたりすると、私たちはあわててそれを払いのけて清めようとしますが、「心の汚物」ともいうべきネガティブな感情が発生しても、あまり払いのけようとはしません。インフルエンザに感染しないようにマスクなどをして身を守ることには熱心でも、「心の病原菌」ともいうべきネガティブな感情から身を守ろうとはあまりしません。
 しかし、ネガティブな感情が、心やからだ、そして人生に及ぼす害悪の大きさは、汚物やインフルエンザの比ではありません。それは、一生をだいなしにしてしまうことさえあるのです。
 ですから、心のなかに、怒りや恐怖や悲しみや妬み、その他なんであれ、ネガティブな感情が発生したら、心のなかが不潔きわまる汚物だとか、鳥インフルエンザのような猛毒のウイルスが侵入してきたのだというくらいの想像をして、一刻も早くその悪しき感情を消すように努力するべきです。
 そうして、とにかくひたすら感情に乱されない境地を養う努力をしていくのです。それは試行錯誤と悪戦苦闘の連続になるでしょうが、それが覚醒修行の道というものではないかと思うわけです。

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