心の治癒と魂の覚醒

        

依存症を癒す

 読者の方から、次のような質問が寄せられましたので、今回はこれについて考えてみたいと思います。

「甘い物がやめられず過食気味です。後悔する毎日なのですが、このような依存症について、霊的な視点ではどのようにとらえて解決していけばいいでしょうか?」

 心の問題というのは、心そのものが複雑な存在ですから、「こうすれば治る」といったマニュアル通りにいくとは限らず、臨床現場では臨機応変な姿勢と直感が求められます。したがって、これから述べることは、ひとつの可能性であると考えてください。たとえこれでうまくいかなくても、他にうまくいく方法があるはずです。

 さて、このご質問の場合は、甘い物に対する依存症ということですが、程度の差はあれ、実際には私たちはみんな何らかの依存症に陥っているのではないでしょうか。
 アルコール依存症、買い物依存症、お金の依存症、仕事の依存症、見栄や体裁の依存症、異性の依存症、宗教の依存症……その他、さまざまです。
 覚醒をするには、いかなる依存症であれ、それを治癒していかなければなりません。したがって、依存症の問題は、精神医学で依存症と診断された人だけの問題ではなく、実は私たちすべてにかかわる問題なのです。ひらたくいえば、物事に対する執着を減らしていく、ということです。

 では、いったいなぜ、人は依存症になるのでしょうか?
 依存症とは、「それなしではいられない、それがないと心の平安を失って苦痛を感じる」状態のことです。別にアルコールだとか、甘い物だとか、必要以上のお金やモノがなくても、生きる上で何の問題もないはずなのに、それがないと苦痛で仕方がないのです。
 こうなってしまった原因の大半は、過去(たいていは幼少時代)において、「それがないと生きることができない」という、間違った思い込みを抱いてしまったことが、大きな原因です。
 たとえば、子供は親がいなければ生きていけません。親の保護と愛は、生存にかかわる問題なのです。しかし、親の保護と愛が十分に満たされないと、自分の身を守るために自衛手段を取ろうとします。力のない生物の子供が取れる自衛手段は、隠れること、物を蓄えることです。隠れれば外敵に襲われずにすみますし、物(食料)を蓄えておけば、エサが得られなくなったときでも生きていけます。また、自分を守ってくれる他者を求めたりもするでしょうし、あるいは、もしも敵に出会ったとき、自分が強そうな姿をしていれば、敵は攻撃せずに逃げていくかもしれませんので、自分を実際以上に強く大きく見せたいという欲求を持つようになります。
 こうしたことが、アルコール、買い物、お金、仕事、見栄や体裁、異性、宗教といった、あらゆる物事に対する依存症を形成させる根源的な理由なのです。
 しかも、依存症というものは、依存する対象を得ることを繰り返していると、モルヒネと同じような働きをする物質で、「脳内麻薬様物質」として知られるベータ・エンドルフィンが分泌されます。つまり、依存症というのは、たいていの場合、二重の依存構造が構築されているわけです。ひとつは最初に述べた生物の本能レベルにおける心理的な依存であり、もうひとつは、脳内麻薬への依存です。
 このように、長期に渡って依存症を患っていると、脳の生理機能が変容している場合が多く、そのために、なかなか治りにくくなってしまうわけです。
 そこで、依存症を治癒するには、上記の二重の依存構造を視野に入れた二つのアプローチをしていく必要があります。

 まず、生物の本能的な心理レベルを治癒するために、自分自身に対する自信を養うことが求められます。換言すれば、「自分は外界や人生をコントロールする力を持っているのだ」という自信です。子供が親の保護を必要とする理由は、要するに、子供には外界の出来事をコントロールする力がないからです。そのために、自分以外のものに依存せざるを得ないのです。
 では、どのようにして、そうした自信を養っていけばいいのでしょうか?
 それには、小さな成功体験を積み重ねていくことです。自分の得意なことに熱中して何かをやり遂げたりなど、そういう達成感を重ねていくことで、「自分には外界や人生をコントロールする力があるんだ」という自信が芽生えてきます。そのことが、依存症から解放されるために必要なのです。
 この場合、できれば、親身になって支えてくれる人がいればすばらしいです。ただしその人に依存的な傾向があってはダメです。「自分が必要とされるために相手を必要とする」、いわゆる共依存の関係になってしまいます。こうなると、相手が治ってしまえば自分は必要とされなくなりますから、無意識的にあなたが治るのを妨げようとするかもしれません。依存の傾向がない、親身になって支えてくれるパートナーが、依存症を克服するには大切です。とはいえ、必ずしもそういう人に恵まれるとは限りませんから、基本的には、自力で頑張っていくことになります。

 次に、脳内麻薬の依存を解消させるアプローチをしなければなりません。
 そのためのひとつの方法は、イマジネーションを使うのです。ご質問の場合、甘い物を過食してしまうということですので、甘い物を食べているイメージを浮かべてください。その際、今の自分が食べているのではなく、子供時代に戻って(どの年齢かは自分がしっくりとくる年齢でかまいません)、子供の自分が食べているのだと想像してください。これは、依存症の原因が主に子供時代のトラウマと関係しているためです。とくに甘い物に対する依存は、満たされなかった親の愛情の空虚感を、甘い物(親の愛の代替物)で満たそうとしている可能性があるからです。
 想像は、なるべく具体的かつリアルに行ってください。
 たとえば、幼稚園児のあなたが、大好きな明治製菓の○○チョコレートを食べているのだと想像します。チョコレートが舌の上でとろける感覚、その甘みと風味が口のなかに広がる感覚、飲み込んで胃の中に入り、からだがその甘美な味わいに喜んでいる感覚、そのときの幸せで満ち足りた感覚を、ありありと、じっくりと、想像してください。そして気の済むまで、甘い物を食べてください。
 そうすると、これだけでも脳内麻薬が分泌されてきます。そして、うまく行っていけば、現実の甘い物は、あまり食べなくても大丈夫なようになってくるはずです。
 そして、過食とまでいかないくらいに量が減ったら、それで治癒は完了です。ただし、甘い物を食べるというイマジネーションは急には止めないで、時間を減らしながら、徐々に止めていってください。

 人間は、さまざまな心の悩みや体の悩みを抱えます。表層的に見れば、それは過去生からのカルマの報いなのかもしれませんが、もっと深く、宇宙的な視野から見れば、それらはすべて、私たちを覚醒に導くための「修行法」だと思うのです。甘い物を過食して依存してしまったということは、「これがおまえをもっとも覚醒に導いてくれる最適の修行じゃ!」と、神が与えてくださった「課題」だと思うのです。「病気」ではないのです。
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コメント

ご丁寧なご教示をありがとうございました。親に対する幼少時代のトラウマは思い当たることがあります。治したいと本を読みあさる中で自分なりに考えてきました。でも原因が思い当たってもそれでどうやって具体的に治していけばよいのかがわかりませんでした。幼少時代のつらい気持ちは親に伝えないと手放すことはできないのでしょうか?成功体験を積むなかでの自信回復、脳内麻薬の話も初めて知りました。ありがとうございます。もうひとつ、私の場合、つらいときに口にした甘いものに救われたと感じた経験がずっと尾をひいていて、なにかストレスを感じると食べなければという強迫的な気持ちになるように思います。甘いものは結局、自分の内なるエネルギーを消耗させるだけと言い聞かせてもその時は頼らざるを得ない心境になってしまうのです。おっしゃるとおり、この依存症は私の魂の成長の課題・機会のように思います。そう思っても抵抗してしまう自分にがっかりするのです。
2010-06-21 Mon 21:41 | URL | WakayamaKajimoto [ 編集 ]
斉藤啓一です。コメントありがとうございました。
幼少時代の辛い気持ちは、もし事情が許すなら、親に伝えて理解してもらうとよいと思います。しかし、なかなかそのような状況にない場合も多いかと思います。その場合は、とりあえず子供の気持ちで紙に書き、今度はその書いたものに対して、(子供時代の)自分に語りかけるようにコメントを書いてみるというのが、ひとつの方法です。
また、甘い物をやめるかどうかですが、どの程度召し上がっておられるのかわからないので何ともいえませんが、少しくらい甘い物をとっても、いいのではないかと思います。むしろ「甘い物はとってはいけないんだ」というこだわりの方が、問題であることもあるかもしれません。
2010-06-21 Mon 21:53 | URL | 斉藤啓一 [ 編集 ]
アドバイスをありがとうございました。心身とも爽やかでいられるように努力したいと思います。今回、魂の覚醒の話とは少し違ってしまいましたが、私は斉藤先生の「ブログについて」に共感しており、心理学は今後、霊的な視点なしにはなりゆかないように感じております。なので先生の研究テーマである「心の治癒と魂の覚醒」、「心理療法と魂の進化」は私が学びたいと思っているテーマです。今後ともよろしくお願いいたします。
2010-06-22 Tue 09:49 | URL | WakayamaKajimoto [ 編集 ]

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