トランプ大統領誕生に関して2017-01-23 Mon 17:26
いま世界は、トランプ新大統領の話題で持ちきりである。
当初、あのような暴言や差別的な発言をする人物が大統領になるとは、ほとんどの人が予想していなかった。大統領に選ばれたとき、株価は大きく値下がりした。株価は人々の心理を反映する。彼が大統領になれば大変なことになると思ったわけだ。しかし、直後の記者会見でまともな発言をしたことから、「大統領になれば、案外うまくいくかもしれない」との期待感から、株価は上昇に転じた。ところが、つい最近の記者会見での品性のなさ、大統領就任挨拶における、経済政策への具体性のなさや過剰な保護主義への懸念のため、不透明感が広がり、株価は再び下げに転じている。 トランプ大統領の基本理念は、極論を言えば、「自分さえよければどうでもいい」ということだ。「アメリカの経済さえよくなればそれでいい」である。そうした明確で力強い発言が、経済的に恵まれない人々に支持され、当選したと考えられている。 確かに、経済的に困っている人にとっては、それを救ってくれそうな力強いメッセージを掲げる人物を支持したくなるのは、無理もないことだと思う。不法移民のために職を奪われたり、治安が悪化したり、その対策として莫大な税金が投入されていることに不満を抱くことも無理のないことだ。そういう鬱積した不満を抱えていた人々にとって「国境に壁を作る」といった、途方もない提案をする人物には、ある種の清涼感というか、ガス抜きのような効果を発揮したのであろう。 いずれにしろ、トランプ大統領の誕生で、アメリカは大きく分断した。正確に言えば、分断状態がさらに大きくあからさまになった。アメリカの分断への傾向は以前からすでに始まっている。たとえば、ある州では、貧困層にばかり税金が使われることに不満を抱いた富裕層が、富裕層だけが暮らすための市を作ってしまった。 また、イギリスのEU離脱をはじめ、アメリカのみならず、世界的な潮流として、世界は分断の方向に揺れ動いているように感じられる。 歴史というものは、振り子のように揺れながら進んでいる。あるときは分断に揺れ、しばらくするとそれではいけないと、統合に揺れる。しかしそれもしばらくすると、さまざまな問題が生じてきて、また分断へと向かう。こういうことを繰り返している。 したがって、しばらく世界は分断に向かうかもしれないが、またしばらくすれば統合へと揺れてくるに違いない。 しかしながら、分断状態には非常な危険がつきまとう。その最たるものが戦争だ。戦争が起こる主な原因は、領土と経済である。経済戦争が、本当の戦争に移行する可能性は十分にあり得る。経済戦争は、自分だけの利益を考えようとすることから始まる。 それゆえ、トランプ大統領の誕生が、世界が戦争へと突入していくきっかけにならなければいいと懸念している。現代は、過去の戦争とは異なり、多くの国が核を持っている。一度核が使われたら、その報復として何発もの核が使われる。その結果、地球上の多くの国が、放射線と核の冬(核爆弾で舞い上がった塵が長い間空を覆って太陽がささなくなる現象)により、人間が住めない場所になる。そうなると、勝者も敗者もない。人類そのものが絶滅の危機にさらされ、すべての国が敗者となり、悲惨なことになる。 まさか、そんなことはないだろうと思われるかもしれないが、イギリスのEU離脱にしてもトランプ大統領の誕生にしても、ほとんどの人は「まさかそんなことはないだろう」と思っていたことが起きたのだから、世界大戦が勃発することも、決してあり得ないことではない。そんな状態になってから、世界が統合に揺れだしたとしても、すでに遅い。 仮に、そこまでの惨事には至らなくても、「自分さえよければいい」という考え方は、目先はいいかもしれないが、結局は自分の首をも絞めることになる。なぜなら、人類は相互協力によって成り立っているからだ。たとえば、自分さえよければいいという社員が多い会社は、決して伸びていかない。会社も社会も、世界も、オーケストラのようなもので、お互いの立場を大切にして調和的に進んでいくことで、すべての人が恩恵を受けるような構造をしている。 したがって、もしこのままトランプ大統領が「自分さえよければいい」という姿勢で貫いていけば、しばらくは対症療法的にうまくいって国民の支持を得るかもしれないが、やがてうまくいかなくなり、国民からの支持を失うのではないかと、私は考えている。 では、私たちとしては、これからどうしたらいいのだろうか? 一部の独裁国家を除いて、世界の多くの国の政策は、民意が反映される。したがって、私たちひとりひとりが「自分だけがよければいい」という考え方を持たないことだ。お互いの利益を考えるようにすることである。そうすれば、そういう考え方を持った人が指導者に選ばれる。 「しかし、私たち日本人がそんな考え方をしても、アメリカや世界は何も変わらないのではないか」と思われるかもしれない。私は、そうでもないと思っている。というのは、現在は、インターネットで世界中の人が情報を共有しているからだ。たとえば、私たちの身近で生じた小さな親切行為が、またたくまに世界中に配信され、世界中の人が知ることができる時代である。実際、たとえば日本人の礼儀正しさなどは、インターネットを通して世界中の人から称賛されている。 私たちが、「自分のことさえよければいい」という考え方を断固として退け、「お互いのためによいことを選ぶ」という考え方を持って実践していけば、世界中の国民に影響を与え、世界を変えていくことができる。即効性はないかもしれないが、じわじわと大きな潮流になる可能性は十分にある。 私たちひとりひとりには、世界を変えるほどの力はないかもしれない。しかし、世界を変えることができる力を持った人を、そうなるように変える力は、誰もが持っている。 スポンサーサイト
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コメント
こんばんは。
冬本番の寒さですが、病の具合はいかがでしょうか。 トランプもヒラリーも結局は同じ狢であり、マスメディアが流すようなニュースには、本当に知るべき事実があるのか疑わしいと思います。 これからはあたりまえだった依存の意識について、一から見直さないといけない時代だと考えます。これまでとこれからの区切りをつける勇気・・・。 久しぶりに覗いてみたら、国際政治ネタだったので投稿させてもらいました。 IndianLineman https://twitter.com/indian_lineman
斉藤啓一です。IndianLinemanさん、コメントありがとうございます。体調の方は一進一退といった感じですが、大丈夫です。ありがとうございます。さて、おっしゃるように、過去と区切りをつけて、あらたな時代に対応する勇気が必要ですね。この「勇気」というものが、今後、大きな力となるような気がしています。
2017-01-24 Tue 22:17 | URL | [ 編集 ]
斉藤啓一さん、こんばんは。
プロフィールに哲学者とあるですが、ご自身が影響を受けた思想家、哲学者、聖者について教えていただけたら幸いです。 ちなみに私はショーペンハウアー、ユング、ヘッセなどです。 貴方の著作「カバラ数秘術」を10代の頃、手にした名も無き者 IndianLineman https://twitter.com/indian_lineman
斉藤啓一です。私が影響を受けた思想家や聖者はたくさんいますが、釈迦、イエス、良寛、クリシュナムルティ、フランクル、ブーバーといったところでしょうか。ショーペンハウエルやヘッセなども好きですよ。共感します。
2017-01-25 Wed 20:56 | URL | [ 編集 ]
しかし真理の道はつきないですね。
先達のためになることば、思想の精髄もじっさいに生きていく知恵に昇華しないことには受け取ったことにはならないと考えますので、いつも試行錯誤する日々をおくっております。 まだ厳しい寒さがしばらく続きます。 お互い、体調にはくれぐれも注意致しましょう。 お返事ありがとう御座います。 IndianLineman
滝澤通孝さんへ
現在のトランプはすでに殺されていて替え玉が演じている、という情報も出ているのです。 ヒラリー・クリントンやロシアのプーチンなども、写真を見れば別人だというのは、かなり有名な話です。 https://twitter.com/search?q=%40alo353%20%E3%80%80%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97&src=typd IndianLineman https://twitter.com/indian_lineman
・・・
言葉は行いがともわっていないのであれば 狂信者のただのたわごとで終わります 心の治癒と魂の覚醒 私個人にとっても心の恩人である方、しかしながら、不幸なことに心の病に苦しまれている斉藤啓一さんが自ら名づけたこのブログのタイトル・・・ 心の治癒と魂の覚醒 それこそは、(原因である神からの)無言の暗示なのではないのでしょうか? IndianLineman https://twitter.com/indian_lineman
斉藤さま
感情的な意見が現れそうな記事ですが、そのようなこともなく凪いでいますね。 この辺りは流石だと思います。 ドナルド・ジョン・トランプという人物は、良くも悪くも世界に選択を投げかけたのでjはないでしょうか。 「自分のことさえよければいい」と考えている個人や国家、それに対して、そのままをぶつけ返した形。 個人的にはとても興味深く見ています。 エゴとエゴのぶつかり合いです。 きっとどちらも勝つことはできない。 人のエゴとは、どこまで膨れ上がるのか? おそらく極限まで膨れ上がったエゴは、そのものを無にしてしまう。 エゴとは、超自分主義。 ところが、人は他者なくして自分を認識することができない存在だと思います。 エゴに走った結果、消えるのは自分の存在……。 ドナルド・ジョン・トランプ氏が自身のエゴで世界のエゴを表面に引き出すことになり、これに同調するも、静観するも、反発するも、それぞれが重要な選択なのではないでしょうか。 2017-01-30 Mon 10:02 | URL | 黒いネコ [ 編集 ]
斉藤啓一です。黒いネコさん、コメントありがとうございました。皮肉を言えば、トランプ大統領は、「エゴのやり方ではうまくいかない」ということを強烈にアピールした「すばらしい大統領」ということで、歴史に刻まれるかもしれませんね。
2017-01-30 Mon 17:51 | URL | [ 編集 ]
斉藤啓一さん。こころの病はエゴから起きていると私は考えます。事実をありのままに見て認めることが出来ない習慣。大人になればなるほど、凝り固まり柔軟性を失い、それは困難になる。
トランプは私たちのエゴの映し鏡。少なくともヒラリーよりは、生きる示唆を私たちに与えてくれると私は考えたいです。時代のパラダイムの変化のために。 IndianLineman https://twitter.com/indian_lineman
斉藤啓一です。| IndianLineman さん、心の病はエゴから来ているというのは、一面では真理かもしれません。しかし、それほど単純ではないのです。あなたの好きなヘッセもウツになりました。W・ジェイムズもブーバーもウツで苦しみました。白隠はノイローゼで苦しみました。事実をありのままに見るがゆえに心を病む人もいれば、エゴがあるゆえに心の病にならない人もいるのです。
2017-01-31 Tue 09:56 | URL | [ 編集 ]
斉藤さま
トランプ氏が反面教師の「すばらしい大統領」ということになれば、とても面白いですね。 心の病については、まだ確証をつかめずにいますが、考察し続ける中で、重要なことをいくつも感じています。 いじめっ子といじめられっ子は同様にエネルギーを抱えます。 そのエネルギーが外(他者)に向かうといじめっ子。 内(自分)に向かうといじめられっ子。 細かいところは省きますが、そのエネルギーはどこからくるのか?それを探っていました。 観察していくと、感情が見えてきます。 言葉というよりも感情をぶつけられた時、または自分の中に感情が沸き上がってきた時、エネルギーが大きくなっているように感じます。 詳しいことはまだ書けませんが、このエネルギーを処理するには、ひたすら俯瞰し、心の動きを観察する。 そのエネルギーの外から観察できるようになれば、心のダメージは大きく軽減できるのでは……と考えています。 いじめっ子はエネルギーを感情とともに外に吐き出します。(トランプ大統領もこれに近いですね) それに声を上げて反発する人も、同様のエネルギー(感情)をぶつけてきます。 いじめられっ子は、この感情をぶつけられて、自分の心を削ることにエネルギーを使います。 (いじめられっ子というい言い方は間違っているかもしれません。エネルギーが内向きの人のことです) このシステムでは、エネルギーの健全な処理ができないままです。 でも、このエネルギーはある程度外からでもコントロールできるのでは……と考えています。 ……まだまだゴールは見えないのですが。 2017-01-31 Tue 18:09 | URL | 黒いネコ [ 編集 ]
斉藤啓一さん、こんばんは。
>心の病はエゴから来ているというのは、一面では真理かもしれません。しかし、それほど単純ではないのです。 >事実をありのままに見るがゆえに心を病む人もいれば、エゴがあるゆえに心の病にならない人もいるのです。 実を申しますと私自身も若いころに神経を患い長いこと病院通いをした経験がある身です。あなたの「カバラ数秘術」がよく売れている時分です。 仰るように物事は単純ではなく、見る角度によって、また観測者によって違いが出てきます。こころの病がエゴから起きている、というコメントの本意は、エゴの取り扱いの過ちから、起きていると言い直した方が適切かもしれません。 腐敗堕落した宮廷から出家した釈迦も現実とエゴとの相克に気づいて、葛藤に苦しみ、のちに解脱の境地に至った、と私は理解しています。 真理の言葉はたしかに残された。・・・しかし私たちはその残された真意を汲み取って生きているとは程遠い現実を日々目の当たりにしている。特に日本では偏った情報だけがマスメディアから流され、正しく判断できる環境ではありません。 こころが敏感であるほど、痛みを感じやすくなり苦しみを自覚します。エゴとはトランプのような権勢のための強欲とは限りません。その権勢集団のエゴに埋没できない魂も苦しみます。とにかく、お伝えたいことは、私も斉藤さんが受けている苦しみを、こころの内で共有しているのです、ということなのです。 IndianLineman https://twitter.com/i/likes
斉藤啓一です。黒いネコさん、そしてIndianLinemanさん、コメントありがとうございました。とても考えさせられるきっかけとなるご意見をいただき感謝もうしあげます。
2017-01-31 Tue 21:09 | URL | [ 編集 ]
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