八正道の分析①2018-08-04 Sat 10:15
前回は、八正道についての記述を経典からそのままご紹介いたしました。今回は、その内容について、もう少し詳しく私なりの解釈をしてみたいと思います。 まず、最初の正見ですが、経典にはこう書いてあります。 「苦なるものを知ること、苦の生起を知ること、苦を滅することを知ること、苦の滅尽にいたる道を知ること、これを名づけて正見というのである」 これは明らかに「四諦」のことです。すでに述べたように、四諦=仏教ですので、仏教の見解は正しいものであり、この見解をもつことが「正しい見方である(正見)」と言っているわけです。当然ですが、仏教の道を歩むには、ここから始めなければなりません。仏教の教えを正しい見解と納得できなければ、その道を歩むことはないでしょうから。 二番目の正思(最近では「正思惟」と記述することが多い)ですが、経典にはこう書いてあります。 「迷いの世間を離れたいと思うこと、悪意を抱くことから免れたいと思うこと、他者を害することなからんと思うことがそれである」 釈迦の教えでは、悪業を積むことを厳しく戒めています。悪業を積めば苦しみが訪れますし、修行の妨げになるからです。悪業、すなわち悪い行為は、悪い思い(思考)から生じるわけですから、悪業を積まないような思い(思考)が、正しい思い(正思)であると説いているわけです。 三番目の正語について、経典にはこう書いてあります。 「偽りの言葉を離れること、中傷する言葉を離れること。麁悪(そあく)な言葉を離れること。および雑穢(ぞうえ)なる言葉を離れることがそれである」 正語の修行には、二つの目的があると思います。ひとつは、悪業を積まないという目的です。言葉もひとつの行為ですから、人を傷つける言葉は悪業となり、それがいずれ自分の身にふりかかってきます。 もうひとつは、言葉というものは意識のありかたを反映します。悪い意識を持っていれば悪い言葉が出るでしょう。しかし逆もまたしかりで、意識的によい言葉を使うようにすると、意識もよい方向に高められていくのです。 このように、悪業は、カルマの制御と意識の制御という二つの目的があると私は考えます。 四番目の「正業」について、経典にはこう書いてあります。 「殺生を離れること、与えられざるを取らざること、清浄ならぬ行為を離れることがそれである」 これも悪業をしないということです。 五番目の「正命」について、経典にはこう書いてあります。 「よこしまの生き方を断って、正しい出家の法をまもって生きる」 これも基本的には「正業」と同じことですが、とりわけ出家修行者の戒律を守る生き方が強調されています。 六番目の「正精進」について、経典にはこう書いてあります。 「いまだ生ぜざる悪しきことは生ぜざらしめんと志を起して、ただひたすらに、つとめ励み、心を振い起して努力をする。あるいは、すでに生じた悪しきことを断とうとして志を起し、ただひたすらに、つとめ励み、心を振い起して努力をする。あるいは、いまだ生ぜざる善きことを生ぜしめんがために志を起し、ただひたすらに、つとめ励み、心を振い起して努力をする。あるいはまた、すでに生じた善きことを住せしめ、忘れず、ますます修習して、全きにいたらしめたいと志をたてて、ただひたすらに、つとめ励み、心を振い起して努力をする」 これも基本的には「正業」と同じことですが、さらに徹底しており、潜在的な悪は顕在化しないように努力し、顕在化してしまった悪はそれを断ち、さらに善についても積極的な姿勢で、潜在的な善は顕在化させるように努力し、顕在化した善はさらにそれを高めていくということです。 以上の六つの修行は、それほど理解するのに難しいというほとではないと思います。 しかし、七番目の「正念」と最後の「正定」は少し難しいです。 これらについては次回、ご説明したいと思います。 スポンサーサイト
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コメント
為になります。
まさに「生き方」の教え、指針となります。 自分はどのように生きたのであろうか。人生最後の日に己を振り返り、何もなしえなかったとする後悔があっても、私は正しく生きたと思えたらいいですね。自分の本流を見失わない生き方、その一つの在り方として、とても参考になりました。 ありがとうございます。 2018-08-05 Sun 07:45 | URL | とおる [ 編集 ]
斉藤啓一です。とおる様、コメントありがとうございました。参考になったようで私としても嬉しく思います。八正道は、生き方の主軸のようなものだと思います。人間としての本来のあり方からぶれないように工夫されているように思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。 2018-08-05 Sun 22:33 | URL | [ 編集 ]
こんにちは、斉藤先生。やはり先生が説くと分かりやすいですね。引き続きよろしくお願いします。
いつかこの記事が本になるといいですね。 2018-08-06 Mon 10:42 | URL | ワタナベ [ 編集 ]
斉藤啓一です。ワタナベさん、コメントありがとうございます。わかりやすいといってくれてありがとうございます。そして将来、本に出来たらいいなと思っています。
引き続き、よろしくお願いいたします。 2018-08-06 Mon 11:20 | URL | [ 編集 ]
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