心の治癒と魂の覚醒

        

 過去のトラウマ経験を癒す

 人は誰にでも、程度の差はあれ過去のトラウマ体験があると思います。親から愛されなかったとか、虐待されたとか、学校でひどいイジメにあったなど、その他、多くのトラウマを抱えながら生きているのが人間ではないでしょうか。
 こうしたトラウマがあっても、今の生活が、たとえば経済的に困ることもなく、仕事や人間関係などで特に悩みがない状態ならば、トラウマはある種の休眠状態になって、それほど大きな問題は生じてこないかもしれません。
 しかし、人生のさまざまなトラブルや苦難に見舞われたとき、過去のトラウマ経験が再生されて、それが思わぬ弱点になってしまうことが多いのです。仕事のうえではいかなる困難にも負けないタフな男性が、失恋しただけですっかり意気消沈してしまうことがあります。その理由は、母親に見捨てられたトラウマがある場合が考えられます。つまり彼にとって、失恋とは、単にひとりの女性の愛が得られなかったというだけでなく、その女性と母親とがだぶっており、幼いときに母親から見捨てられたという(子供からすれば)大変に大きなショックと結びつけられてしまうため、ただの失恋が破滅的なショックとなってしまうわけです。

 同じように、覚醒のために瞑想をして、今まで以上に脳や意識を活性化したり、あるいは覚醒の修行を始めたことによる悪いカルマの浄化現象が起こって不運や精神的不調などが訪れたときにも、過去のトラウマ経験が大きな障害になると思われます。過去のトラウマが意識に再現され、激しく気持ちを乱してしまうのです。
 もっとも、そういうトラウマが再現されること自体、ひとつの浄化現象であり、それによってトラウマが消えていくのだと見ることもできますが、いずれにしろ、人によっては非常に危険な状態に置かれることがあるようです。
 したがって、いかにして過去のトラウマ経験を癒していくか、ということが、覚醒修行にとってひとつの大きな課題になるのではないかと思われます。
 過去のトラウマを癒す作業は、精神療法の専門家にかかっても容易なことではなく、癒されるのに何年もかかったりします。ときどき「一瞬にしてトラウマを癒す」などと宣伝しているところがありますが、脳の神経細胞は短期間に変わるものではないので、たった一回か二回くらいのセラピーでトラウマが完全に癒されるとは考えられません。一時的に抑圧させて癒されたように感じられるだけのように思います。
 それでは、専門家の助けを借りずに、自力で心のトラウマを癒していくには、どうすればいいのでしょうか?
 これはもちろん、大きなテーマでありますから、単純な理屈や方法を提示して片付けられるものではありません。そこで、いろいろなアプローチを、今後ご紹介していきたいと思います。あるアプローチが、効果がある人もいれば、まったく効果がない人もいると思いますが、とにかく試してみることは必要だと思います。

 とりあえず今回は、きわめてシンプルな方法を紹介してみます。
 それは、「自分を他者と比較しない」ということです。そういう発想を習慣づけていくことです。
 人は、他の人と比較されて優劣を判断されると、とても傷つくのです。たとえば、親から「弟の方がおまえより優秀だ」とか「誰々くんは勉強ができるのにおまえはできない」などと言われると、単純に「おまえは勉強ができないな」と言われるよりも、ずっと傷ついてしまうのです。
 しかしながら、現実には、けっこう私たちはこういうことを言われて育ってきました。社会人になっても、他の同僚と比較されて「おまえはダメだなあ」などと言われることが多いわけです。「35歳にもなって嫁にいけない」「40歳にもなって平社員」だといわれたり、同じ年齢なのに他の人の年収はずっと高いとか、誰々より器量がいいとか悪いとか、とにかく私たちは、他者と比較され続けながら生きてきたのです。
 そのため、私たちは自分の価値を高めるために、常に他者と比較するクセがついてしまっています。「私はこれだけいい仕事をした」といったことで自分に価値があるとは思わず、「私は他の人と比べてこれだけ稼いだ、これだけ賞をとった」といったように、他者と比べて上ならば自分には価値があり、下ならば価値がないと思うようになっているのです。
 しかし、このように、自分を他者と比較するクセを、いっさい捨てることです。
 それを徹底していけば、過去において他者と比較されて傷ついたトラウマ経験も、新しい価値観によって再評価され、少しずつ癒されていくはずです。
 自分は自分、他者は他者なのです。年収が平均より低いからといって自分に価値がない、自分は優秀ではないとは限りません。すばらしい技術と感性を持ったオーケストラの演奏者の給料はずいぶん安いと聞きますが、かと思うと無能な役人がいい加減な仕事をして高給を得ていたりするわけです。いったいどちらが社会貢献をしているか、すなわち価値があるかは明白でしょう。
 また、35歳を過ぎて結婚していないからといって、女性としての魅力がないだとか、そういうことは無関係でまったくナンセンスです(ところが地方の田舎などに行くと、こういうことを噂されたりすることが多いのです)。
 社会は、「他者と比較して自分の優劣を決める」という悪しき想念に染まっていますから、年収や肩書きなどによって価値を評価されてしまうことは避けられません。それは、あきらめるしかありません。覚醒をめざす者は、そういうことには「柳に風」と軽く受け流すことです。本当に立派な人であれば、そういうことで評価したりせず、ちゃんと人格を見てくれるものです。
 他者と比較するのではなく、自分がどれほど過去に善いことをしてきたか、どれほど人に役立ってきたか、どれほど優しい言葉をかけてあげたり、親切をしてあげたり、困難にも負けずにがんばってきたか、正義を貫いてきたか、そういったことを、自分の価値として評価するようにしようではありませんか。
 そうすることが、過去のトラウマ経験を癒すための第一歩であると思うのです。
 
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コメント

こんばんわ、斎藤先生。
なるほど、他者と比較しないことがトラウマの解消につながる訳ですね。

私など、コンプレックスの塊のような性格をしているので、よけい重要に感じます。

こういった悪しき傾向を矯正しつつも、世のために貢献することを習慣化することが必要なのですか。
2010-10-08 Fri 18:07 | URL | ワタナベ [ 編集 ]
斉藤啓一です。いつもコメントありがとうございます。
他者と比較しないことは、トラウマ解消の第一歩であり、今後トラウマを作らないための大切な心構えだと思います。
そうして、少しでも世のため人のために生きるように心がければ、その行為そのものが自分に対する自信や価値として感じられるようになり、トラウマを癒す働きをすると思うのです。
2010-10-09 Sat 10:44 | URL | [ 編集 ]

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