心の治癒と魂の覚醒

        

推薦図書 『神はいずこに』

推薦図書
『神はいずこに』 バーナデット・ロバーツ著 大野龍一訳
日本教文社 2008年

 これは、キリスト教の道によって覚醒した女性の内的変容を克明に記した本です。著者のバーナデット・ロバーツは、1931年のロサンジェルスに生まれ、15歳で修道院に入り、10年間修行した後に世俗に戻って大学へ行き、多くの学校で教師を務め、結婚して4人の子供を持つ主婦として(生活上は)平凡に生きている女性です。すなわち、精神的な指導だとか、そういうことはやっていないようです。
 悟りや覚醒に到る内的変容を綴った本はたくさんありますが、これほど詳しく厳しく自分の内面を見つめ、それを科学者のような観察的視野から綴られた本を、私は知りません。ひとりの平凡な女性が、自分の内面に生じたことを、謙虚に誠実に率直に告白していて、非常に感銘を受けます。これは覚醒の道を歩む上で貴重な道標になる本で、ぜひとも読んでいただきたいと思います。

 著者が俗世に戻ってから体験した、さまざまな苦難などを考えますと、やはり覚醒の道は甘くはないなと思います。苦難や試練について、彼女はキリスト教の信仰者であるためか、それを「カルマの消滅」というとらえ方はしていません。彼女によれば、苦難や試練が訪れる目的は、エゴを消滅させることであり、魂の徳を自覚し高めるためであるといいます。
 また、覚醒の道の途上で、「魂の暗夜」と呼ばれる、神から見放されたように感じる非常に辛い時期を経験するといわれ、それについて多くの言及が為されています。
 とにかく、この本で最初から最後まで徹底して説かれていることは、偽りの自己(エゴ)の死滅です。そして、その果てに待ち受けている神との合一です。しかも、この人の鋭いところは、エゴの死滅や神との合一という体験にさえ潜んでいる、エゴの巧妙なワナを暴き出して白日の下にさらしているところです。この内的観察力のすごさは、思わずうなってしまうほどです。
 いずれにしろ、エゴを本当の自分だと思っている私たちにとって、エゴを消滅させることは、実に難しく厳しい体験を経なければならないのだと、思い知らされます。徹底的な自己放棄が要求されると、本のなかで強調されています。彼女によれば、私たちの魂が神との合一という可能性に目覚めると、そのためなら、この世のありとあらゆる苦難であろうと試練であろうと、喜んで受け入れようとするのだそうです。

「試練のみが合一の啓示を伝えてくれるのです」
「魂が救済を体験するためには、完全に、かつ熱烈に生き、あらゆる危険を冒さなければなりません」
「転落することや、罪を犯すことや、足場をなくすことを恐れおののいて生きる人々は、自分がそれをしないということを確かめるために人生を無駄に過ごし、神をほとんど信頼せず、合一状態の賜を有効に使うこともしません」
「人は、物事がうまくいかないとき、神の寵愛を失った、または神が自分に反対されていると考えるものです。そう考えるのは、神のやり方が理解できないからです」
「我が身に起こることを起こるにまかせ、疑わずに受け入れることです。神のやり方を知りたい、自分の魂の中で何が進行しているのか理解したいというのは、私の高慢でした」

 内的な現象を表現しているため、どうしても抽象的な言葉が並び、決してスラスラと楽に読める文章ではありませんが、覚醒に到る貴重な教えが凝縮されており、スピリチュアルな道の本質をついています。昨今のお気軽な(つまりエゴを喜ばせるような)スピリチュアル本ではなく、最初から最後まで真面目一辺倒で突き進みます。しかしそれでいて、苦難や試練に苦しみながら覚醒の道を歩んでいる者にとっては、とても癒され励まされる内容となっています。
 また、彼女の覚醒体験は、禅の思想や、老子の説く「無為自然の道」に通じるものがあり、その点でも非常に親しみが湧くものがあります。
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